《旅VIII》広島初演終了

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 細川俊夫先生の《旅VIII》の広島初演が終わり、埼玉へ帰ってきました。エリザベト音楽大学でのワークショップを含め、一週間にわたる広島滞在はほぼ20年ぶりで色々感慨深いものもありましたが、ここではこの作品について。
 アフタートークの時にも細川先生がお話されていましたが、《旅》シリーズでチューバを使って作曲することになった際に、チベットの長いラッパ、ラグドゥン (Ragdung)が念頭にあったとのことです。
(参考動画:ラグドゥン 余談ですが、この参考動画では、ペダルトーンでシフトを使ったり、循環呼吸を用いたりしていて中々興味深いです)


最初にお話を頂いて練習を開始した時にはまずF管で用意していたのですが、ソリスティックでありながらアンサンブルを下から支える感じも必要だろうということで、細川先生とのリハーサルを経てC管に変更しました。
 チューバとアンサンブル、オーケストラの現代作品において難しいのは、「ソロとアンサンブル」というバランスに持っていくところではないかと思います。今回曲中で2か所ある高音域(ト音譜表)の部分は、元のままとオクターブ下げを聴いていただいて、基本的にオクターブ下に変更しました。同じく、特殊奏法も単体で聴く場合とアンサンブルの中で聴かれる場合では異なることも多いのですが、重音はそのような聴こえ方も踏まえて多くの声の部分を逆にオクターブ上げると同時に、シラブルの変化も場所によって加えています。
 また、息音は特にバランスが難しい部分です。チューバのマウスパイプは直径が大きいため、音量が必要な場合には息が長く続きません。また、ベルが上を向いているため、トランペットやトロンボーンに比べて、息音の細かい表情が伝わりにくい面もあります。今回はトランペットのプラスチックのマウスピースを加工して使用し、音量や音色の変化が聞こえやすい方法を模索しました。
 細川先生ご自身の打楽器パートの加筆もあり、広島での演奏は改訂版の初演といってよいと思います。この改訂を経て、野性的な側面がより強調されて、静かな場面との対比が浮き彫りになったのではないでしょうか。
 この曲はかねてより演奏したいと切望していましたので、今回、川瀬賢太郎さんの指揮、広島交響楽団のみなさんの素晴らしい演奏とともに所縁のある広島で演奏できたことはとても大きな喜びでした。また、このような素晴らしい企画が既に19回も続いていること(自分が学生のころには想像も出来ませんでした)、関係されている皆さんのご尽力に本当に頭が下がる思いです。曲名もそうですが、今回の広島滞在、長い準備期間とともにとても印象の深い旅となりました。

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